最近注目を集める美容成分「レチノール」には、どのような効果があるのでしょうか。
青山ヒフ科クリニック院長でビタミンC研究の第一人者である亀山先生に、詳しくお話を伺いました!
レチノールは、ビタミンAの一種です。
レチノールといってもいくつか種類があり、
パルミチン酸レチノールなどのレチノール誘導体や、レチノール、レチナール、レチノイン酸に分類されます。
ビタミンAはレチノールとして皮膚に入り、レチナールを経てレチノイン酸になります。
レチノールは皮膚の中では、91%がパルミチン酸レチノールで存在し、レチノールの中でも一番安定性が高く刺激性の少ない成分です。
レチノイド反応と呼ばれる、レチノールによる赤みや皮むけなどが心配な方は、まずはパルミチン酸レチノールが配合されたスキンケアを試すのがオススメです。
レチノールには、下記の6つの効果があります。
①老化から肌を保護<SPF20程度>
紫外線からのダメージを保護しコラーゲンの損傷を抑制します。
②表皮細胞の成長を促進<ハリUP>
表皮の厚みがまし、ふっくらと健康な肌へ導きます。
③ターンオーバーを正常化<ターンオーバー促進>
古くなった角質を排出し、皮膚の色調を整えます。
④皮脂分泌の抑制<ニキビ・毛穴改善>
皮脂分泌が減少し、ニキビの改善へ導きます。
⑤繊維芽細胞を活性化<ハリUP・シワ改善>
コラーゲン、ヒアルロン酸の生成が促進され、ハリ・保湿力の向上やシワを軽減します。
⑥炎症を抑制<老化防止>
炎症によって発生する活性酸素を抑え、老化を防止します。
レチノールは皮膚の中では、91%がパルミチン酸レチノールで存在し、レチノールの中でも一番安定性が高く刺激性の少ない成分です。
パルミチン酸レチノールが、肌の中で使用されるときに、下記の図のように、レチノールに変換後、レチナールを経てレチノイン酸になります。
この図だけを見ると、「レチノイン酸をそのまま肌に塗布すればいいのでは?」と思われがちです。
しかし、そのままレチノイン酸を肌に塗布すると、刺激が強く、赤みや皮むけを引き起こすレチノイド反応(通称「A反応」)が出やすくなってしまいます。
よって、赤みや皮むけが気になる人や、肌が敏感な人がレチノール化粧品を選ぶ際には、皮膚への刺激が少なく、なおかつ皮膚の中にも多く存在しているパルミチン酸レチノールが配合されたものがオススメです。
レチノールからレチナール、レチナールからレチノイン酸への変換は、「レチノールデヒドロゲナーゼ」という脱水素酵素により行われます。
この脱水素酵素は、ナイアシンアミド(ビタミンB3)があることで、酵素としての作用をより活性化します。
そのため、レチノールと一緒に
ナイアシンアミドが配合された化粧品を使用すると、レチノールの効果を効率よく発揮すると言えるでしょう。
レチノールは、前述のようにいくつか種類がありますが、レチノールの種類や濃度が適切であれば、敏感肌でも使用可能です。肌が敏感な方は、レチノールの中でも比較的効果が穏やかな「
パルミチン酸レチノール
赤みやかゆみ、皮むけなどが心配な方はパッチテストを行ってからご使用ください。またオイルや乳液の後に使用するなど、油分の上から塗布すると、通常使用より穏やかに作用するのでおすすめです。
ただし、通常よりもお肌が敏感になっている場合は、予想できない症状が発生する可能性もあります。
そのような異常を感じた場合には、一旦ご使用を控えていただき、それでも赤みやかゆみ、皮むけなどの症状が治まらないときは、速やかに医師へご相談ください。
人の皮膚は、紫外線を吸収するメラニンを持ち、皮膚が厚く、ビタミンCなどの抗酸化剤を豊富に持っています。
そのため、紫外線照射によって発生した活性酸素を消去し、また紫外線による皮膚のダメージや発がんの可能性を抑制します。
2022年10月にEU消費者安全科学委員会(EU Scientific Committee on Consumer Safety)でも、パルミチン酸レチノールを含むスキンケア製品についてsafeと再評価していますので、パルミチン酸レチノールは朝使用しても問題ありません。
ただ、エイジングケアの観点から日焼け止めは必ず併用しましょう。
※問題ないという見解の詳しい説明は、下記をご確認ください。
「ビタミンCとレチノール(ビタミンA) は、pHが合わない成分同士なので、成分の良さが打ち消されてしまう」と言われたりしますが、
ビタミンCは水溶性、レチノール(ビタミンA)は油溶性なのでpHは関係なく、上記の説は関係ありません。
ビタミンCは天然型だと不安定で、皮膚に浸透しにくい性質がありますが、水溶性のビタミンC誘導体の㏗は7.6~7.7で、体内の㏗に非常に近く、肌に対する刺激も弱くなっています。水溶性と油溶性成分を一緒に配合することは、処方の技術力でカバーできます。
肌質や、配合されているレチノールの種類・濃度により異なるので一概には言えないですが、
✔“ヘビーな”皮むけを伴うピーリング
✔レーザー治療など光線療法を行う場合
は注意が必要です。
ピーリング剤の場合は、配合濃度が適切であれば、併用をオススメします。
特に角層が厚くなりやすい、ニキビ肌の方にはオススメです。
ただ、製品の組み合わせによっては刺激が出る可能性があるので、
元々1つの製品に組み合わせて配合された製品を選ぶと安心と言えるでしょう。
最近はヘビーなピーリングを伴う化粧品が増えており、角層が薄くなりすぎると、光線に過敏になったり、外的刺激にも過敏になりやすいので注意しましょう。
【取材協力】青山ヒフ科クリニック院長 皮膚科専門医 医学博士 亀山孝一郎
1980年北里大学医学部卒業。
その後、北里大学皮膚科に入局。1986年1月~1989年5月まで、世界最高峰の研究機関である米国立衛生研究所(National Institutes of Health, NIH)にて、メラニンの生成について最新研究に没頭。1999年に、ニキビは感染症であるというそれまでの常識を覆す。“ニキビは感染症ではない、皮脂の過剰分泌を背景とした活性酸素病であり、アクネ菌はその悪化因子である”という趣旨の論文を発表。同年、医療法人社団星美会 青山ヒフ科クリニックを開業。また、ビタミンCの誘導体が天然型の何倍も肌に吸収されることを、世界ではじめて証明した。いまでこそニキビにビタミンCが効くことはあたりまえになったが、“ビタミンCのニキビに対する効果”という論文は当時驚きを持って迎えられた。
2020年5月発売「毛穴道」(講談社)を監修。