朝から晩まで交感神経を緊張させて働く現代⼥性にとって、休憩時間や⾃宅で⽢い物を摂ることは、まさに⾄福のひとときですね。
しかし⽢い物、ひいては肥満がニキビと⾚ら顔を引き起こす可能性をぐっと⾼めているのです。
その事実を解説します。
僕は⽇々ニキビや⾚ら顔の患者様に接しています。診察時に患者様の肌だけでなく、全⾝を観察するようにしました。
その結果あることに気がつきました。
それは、「ニキビ、⾚ら顔の患者さんは、標準体重から肥満傾向の⽅の割合が多い」という事実です。
世界的にその傾向があるのだろうかと調べてみたら、まさに僕が気づいた事実のその通りでした。
特に⼥性では肥満傾向〜肥満の⽅ではニキビの発症率が上昇するのです。
また痩せた男性や⼥性ではニキビの発症率が低下するという報告もあります。
なぜなのでしょうか︖
⽢い物を⾷べるとインスリンやインスリン様成⻑因⼦1(IGF-1)というホルモンが増えます。
これらのホルモンは⽪脂の分泌を増やすだけでなく、表⽪⾓化細胞の増殖を促進して⽑⽳を詰まらせる作⽤があるのです。
そのため、⽢い物を⾷べて太ってしまった⽅は、⽑⽳が詰まりやすくニキビができやすくなる、ということはすぐ想像がつきますね。
インスリンは、グルコースというエネルギーに利⽤しやすい糖を⾎液中から細胞の中に取り⼊れて燃焼させ、⾎糖値を下げるホルモンです。
インスリンが結合するインスリン受容体をたっぷり持っている細胞は代謝の盛んな細胞です。
インスリン受容体の少ない細胞は、糖を細胞の中に取り込むことが困難な活きの悪い細胞ということになります。
僕らの体の中でインスリン受容体が少ない細胞が、過剰な脂肪組織の脂肪細胞です。
過剰な脂肪組織ができる状態が肥満なのです。
⾷事をして吸収された⾎液中の糖は、細胞内に運ばれます。肥満状態ではインスリン受容体の少ない脂肪細胞内に糖を運ぼうとしてインスリンのレベルが上がります。
しかしインスリンの受容体が少ないので、スムーズに⾎糖が細胞の中に⼊らず、⾎糖値は⾼いままです。
これをインスリン抵抗性といいます。
⾎糖値が⾼い状態が継続すると糖尿病が発症するわけです。
もうお分かりになったと思いますが、肥満状態では脂肪細胞のインスリン受容体が少ないために、インスリンのレベルが上がってしまうのです。
インスリンは前述したように、⽪脂の分泌を増やし、⽑⽳を詰まりやすくするのでニキビができやすくなるのです。
まとめると、以下になります。
肥満⇒インスリン受容体が少ない⇒インスリンのレベルが上がる(インスリン増)⇒⽑⽳が詰まり、ニキビができやすい
なぜ肥満の⽅では脂肪細胞のインスリン受容体が減るのでしょうか︖
実は肥満の⽅で増えすぎた脂肪細胞は、⽣体にとってストレスになっているのです。
肥⼤して増殖した脂肪細胞すべてに⼼臓から⾎液を送って栄養を与えるのは、⼼臓にとっても負担をかけます。
ですから「増えすぎた脂肪細胞、お願いだから消えてなくなって︕」と、脂肪細胞を消すために、マクロファージや肥満細胞など、⽑⽳のアクネ菌をやっつける細胞が脂肪組織に⼊り込んで、活性酸素や蛋⽩分解酵素やサイトカインを放出して炎症を起こすのです。
肥満の⽅では、ニキビと同じ炎症が、脂肪組織で起こるのです。
炎症細胞により脂肪細胞はダメージを受け、インスリン受容体を減少させたり、死滅するのです。
脂肪細胞もサイトカインなどを放出して炎症を激しくします。
脂肪組織で放出された、サイトカインや蛋⽩分解酵素は⾎流に乗って全⾝に拡散します。
サイトカインや蛋⽩分解酵素は⽪膚や全⾝の⾎管の透過性を亢進(こうしん)して、全⾝のあらゆる部位で炎症を起こしやすくなります。
透過性が亢進している⾎管とは、⾎管の壁を構成する内⽪細胞と内⽪細胞の隙間が減り、その間を炎症性細胞や⾎液成分が通り抜けて、⽪膚などに染み出しやすくなった⾎管のことです。
肥満の⽅は成⻑ホルモンやアンドロゲンも増加しています。これらのホルモンもニキビのリスクファクターです。
最近、診察した4名の典型的な⾚ら顔の⽅は3名が肥満傾向にあります。
肥満傾向がある⽅や糖尿病の⽅ではサイトカインや蛋⽩分解酵素のレベルが⾼いだけなく、⾎液中のビタミンCのレベルが低いこともわかってきました。
脂肪組織で⽣じる活性酸素を消去するために使われているのです。
⾎液中のビタミンCのレベルが低いということは、⽪膚のビタミンCのレベルがさらに低くなることを意味します。ビタミンCは⽪脂の分泌を抑制しますが、ビタミンC不⾜の肌では⽪脂分泌は促進されてしまいます。私は肥満傾向にないから⼤丈夫だと安⼼するのも早計です。
太っていないのに、あるいは痩せているのに妙にニキビができやすいという⽅は、空腹時や⾷事直後の⾎糖値や糖化ヘモグロビンの値を計ってみることをお勧めします。
最近、チョコレートを⾷べるだけで、痩せている⽅でもインターロイキン1という炎症を⾮常に起こしやすいサイトカインが増加することが判明しました。
ビタミンCの働き
オリゴノールというサプリメントもお勧めです。
オリゴノールは中華料理のデザートにでる果物のライチのエキスです。
オリゴノールが培養細胞レベルで、脂肪細胞のサイトカインの産⽣を抑えること、内服で脂肪組織を減少させ脂肪細胞を⼩型化することが確認されています。
外⽤するとビタミンC同様に強⼒な活性酸素の消去作⽤や⽪脂分泌抑制作⽤を⽑⽳の奥にまで浸透して発揮します。
中国ではこのような作⽤を知っているから、中華料理のあとにライチを摂るようになったのかもしれません。
オリゴノールは植物由来の第2のビタミンCですね。
皮膚科専門医 亀山孝一郎
医師、医学博士
北里大学医学部卒業、世界最高峰の米国立保健衛生研究所(NIH)でメラニン生成についての最新研究に専念。
1999年に、ニキビは感染症であるというそれまでの常識を大きく覆す。
同年、医療法人社団星美会 青山ヒフ科クリニックを開業。
2002年6月オリジナル化粧品ドクターケイを発表。